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33.望遠鏡にまつわるエトセトラ。 [星空への招待]

(写真はイメージ)

 突然ですが、ビジターセンターに「天体望遠鏡」がやって来ました。口径10cm、屈折赤道儀式望遠鏡です。組立てを終えて、デビューの日、つまり実際に星空に向けられる日を待ち構えているのですが、上高地はあいにくの雨続きで未だそのチャンスがありません。飾っておいても意味のない代物です。これから大勢の人に“宇宙の素顔”を垣間見せてくれる道具として、大いに活躍してくれることを期待します。
 ところで、この望遠鏡は何倍?とありがちな質問をしたくなる人が大勢います。倍率にこだわる気持ちも分からぬではありませんが、あまり意味のないことです。望遠鏡の倍率は、対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離で求められますが、接眼レンズは交換が可能で、より短焦点のものを用いることによって極端な話、倍率はいくらでも高くできます。でも、何を見るかにもよりますが、その望遠鏡の対物レンズの性能以上に拡大しようとしても星像が暗く、見にくくなるばかりで、より細部まで見えてくるわけではありません。新聞に掲載された写真をもっと詳しく見てやろうとルーペで拡大しても、印刷の荒い粒子が見えてくるだけで細かな部分は結局わかりません。それに似ています。
 望遠鏡の性能は対物レンズの口径で決まる、これが大事なポイントです。では、口径10cmの性能とはどのくらいでしょう? 以下、理論上のデータですが、集光力は肉眼の約280倍、12等級の天体まで見えます。惑星でいうと冥王星以外すべて見えます。最近の天体「月」の表面などはもう手が届きそうな大迫力で見えてしまいますが、クレーターでは直径4.0km、割れ目(谷や溝)では200mのものまで確認できますから、月にある上高地ほどの規模の谷間は、余裕で見えるということです。
 重量わずか5.2kgの、吹けば飛ぶような望遠鏡ですが、光学的な性能はなかなか優れているのです。21年ぶりに探査機が着陸して話題の「火星」はいま、夕空のおとめ座にあり、1億9.000万km彼方の生の姿に接すれば、小さいながらも感慨深い気持ちになることでしょうし、時間が許せば、木星や土星そして天の川のなかの星雲・星団の数々… と一台の望遠鏡によって星空の楽しみ方は無限に広がってゆきます。

 

 PS.天候のせいもあって上高地の「星空を見る会」は今年まだ一度も開いていませんが、気楽にやっていきたいと思います。希望者がどのくらいあるか不明ですが、星座の説明はともかく、ゆっくり望遠鏡を覗いてもらうためにも定員制としました。ご要望が多いようなら、いつでも実施OK?なので、とりあえずビジターセンターに問い合わせてみて下さい。(←注:執筆当時の内容をそのまま掲載しています)

 

「マガモ新聞」No.154(1997年7月14日、上高地ビジターセンター発行)より


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