25.シーズン開幕によせて [星空への招待]
今年も、上高地の新しいシーズンが始まりました。
初めて訪れた方、何度も足を運んでいる方などさまざまと思いますが、その度ごとに新たな感動のある場所ではないでしょうか。上高地で働く私たちにとっても、何度目の入山であってもこの風景に感動し、新鮮な気持ちになります。そしてまた同じ時期でも、自然は私たちにそのたびに違った姿を見せてくれます。
○星空への招待○は、昨年からのつづきで第25話から始めたいと思います。上高地の自然をより楽しんでいただく為に、今年も星空に関する情報や話題を、この場をお借り して紹介させて戴くつもりです。「星空の観察会」もできれば回数を増やし、充実させていく予定です。
ここに勤務する私たちは準備のため、一般の方たちより一足早く、4月23日に入山しましたが、晴れ渡った素晴らしい星空に迎えられたのは入山3日目の夜でした。半年ほど前の昨シーズン終了の頃は、遅い時間にならないと出会えなかった冬の星座たちが、日が暮れて間もない時刻にもう焼岳の方角に大きく傾いています。半年の間に星空も半周したことを実感します。西に傾く冬の星座と残雪の焼岳は、上高地に「春」の到来を告げる光景です。
おまけに今年はヘール-ボッブ彗星が見えていて、遠ざかってひと頃より暗くなったとはいえ、まだしばらく肉眼で尾の伸びた姿を楽しむことができます。焼岳と西穂高岳の中間付近の夕空を探してみてください。昨年の百武彗星とこのヘール・ボップ彗星、二年連続で大彗星とめぐり逢えた幸運を、私たちはいつまでも忘れずにいたいものです。
1997年、今シーズンの上高地は、歴史的な星空のもとに幕を開けました。
「マガモ新聞」No.146(1997年5月5日、上高地ビジターセンター発行)より
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